スポーツベットはマカオに新風を吹き込むか

マカオのスポーツベット

マカオのスポーツベット

マカオは誰もが認める世界のカジノの中心地だが、スパンコールや羽のついた衣装をまとったショーガールに加えて、必需品の1つが欠けている。マカオのカジノにはスポーツブックメーカー (スポーツギャンブル)のラウンジがない。マカオの法律のねじれが招いた結果だが、政府に修正を急ぐ様子はない。また別の法律のおかげで生まれた最先端のオンラインブックメーカー、デイリーファンタジースポーツ(DFS)が米国で包囲網にさらされている昨今、マカオなどアジアはDFSが異常なまでの成長を続ける次の場所になる可能性がある。

壁一面のプラズマテレビ、賭けに使う携帯機器やVIP向けサービス完備といった今時のスポーツブックメーカー用ラウンジがマカオにはない。この紛れもない事実についてサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙のコラムニスト、ティム・ヌーナン氏は「究極のスポーツバー」がないのは、マカオのギャンブルの自由化が中途半端なせいだと指摘する。

スポーツブックメーカーは、宝くじ同様マカオではなお専売事業だ。著名実業家スタンレー・ホー氏率いるSJMホールディングスの関連企業、マカオ・スロットがスポーツブックメーカーを独占し、マカオの10カ所でサッカーとバスケットボールの賭けを行っている。このうち半分がSJMのカジノ内か近くにある。

これらは最先端のスポーツブックメーカー用ラウンジと比べると自転車とフェラーリぐらいのギャップがある。売上高は専売事業にありがちな投資と新しい工夫不足を反映している。客にはモバイル、電話とオンラインの選択肢はあっても、昨年のマカオ・スロットの売上高はわずか7億3600万パタカ、9200万ドル程度(113億円)だった。

一方、珠江デルタを超えたところにあるこれも専売事業の香港ジョッキークラブは、サッカーだけのスポーツブックメーカーで売上高は782億香港ドル(1兆2370億円)に上った。そう、香港はマカオよりずっと大きいが売上高の110倍の差は、人口の違いだけではなく事業者の違いも大きい。

マカオ・スロットの営業免許の6月末の期限満了が近づいても、また、2005年にオープンしたサンズ・マカオでのカジノ自由化が売上高だけでなく投資や雇用に与えた影響が実証されているにもかかわらず、当局はスポーツブックメーカー自由化の動きを全く見せなかった。その代りに政府はマカオ・スロットの専売事業を1年だけ延長した。これはもしかしたら自由化を検討しているからかもしれない。

スポーツベットラウンジ

スポーツベットラウンジ

マカオのカジノ収入が大幅に減少し、VIP中心のビジネスモデルが不振な中、スポーツブックメーカーはゲームに新たな息吹を吹き込む当然の方法のようにみえる。コンサルティング会社グローバル・マーケット・アドバイザーズのアンドリュー・クレバナウ氏は「スポーツブックメーカー用ラウンジはいろいろな点でカジノの魅力を増大できる」とし、従来のカジノゲームに興味のないさまざまな顧客層を引き付けるほか、世界のスポーツカレンダーがそっくりそのままプロモーションカレンダーになる点を挙げた。

カジノやインターネットでスポーツブックメーカーを運営するフットボールベット・ドット・コムのデービッド・レッポ会長兼CEOは、マカオのコタイの新しいリゾート施設は、政府が定める最高テーブル数よりも数百台多くのゲーム卓を置く余裕がある。現代的なスポーツブックメーカーラウンジは、スペースを埋めるだけでなく、カジノ間の差別化にも役立つと指摘する。

レッポ氏によると、アジアでここ最近DFSへの関心が高まっているという。DFSは、賭けをする人が野球、アメリカンフットボール、バスケットボール、ホッケーやゴルフ、NASCARで自分のプロチームを作り、結果は選んだカテゴリーの選手の成績で決まる。

アメリカのインターネットギャンブル法の抜け穴を通ってDFSは2009年のスタートから急成長しており、コンサルタント会社アイラース・リサーチのパートナー、アダム・クレジック氏によると、サイト大手のDraftKings とFanDualは今年の6月までにその価値はそれぞれ10億ドルと見積もられた。ただ、ネバダ州がDFSを違法とし、従業員がインサイド情報を使ってライバルのウェブサイトで勝ったことで規制制度の落ち度が明るみに出たことを受け、米業界は冷え込みそうだ。

アメリカのDFS先駆者が焦点をアジアに移すのに機が熟したかもしれない。イノベーション・グループ国際部のエグゼクティブバイスプレジデント、デービッド・リトヴォ氏は今のメニューをサッカー(国際試合と現地試合)などアジアの好み (インドのクリケット?) に合わせさえすればよいと指摘。

アイラース・リサーチによると、従来のギャンブルとDefense of the Ancients やLeague of Legendsなどのオンライン戦闘ゲームを行うプロに賭けるファンタジーギャンブル両者からなるeSports ギャンブルについて、参加者の半分はアジア、残りの半分が中国本土からだという。当局と事業者が合法的にまた快適にプレーさせてくれさえすれば、アジアにプレーの用意ができているのは明らかだ。 (by Muhammad Cohen/CONTRIBUTOR/Forbes JAPAN)