フィリピンのホテル産業が拡大している。米不動産大手クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドによると、1~6月のフィリピンのホテル分野への投資額は2億420万ドル(約215億円)となり、前年同期の3585万ドルの約5.6倍、昨年1~12月の9634万ドルの約2倍となった。
カジノの好調などによって旅行者数が増加しており、ホテル需要が高まっているのが要因だ。現地紙インクワイアラーなどが報じた。
クッシュマンの東南アジア地域担当者は「フィリピンはインドネシア、タイ、スリランカなどと並び今後数年間に大型契約が続くなど活況な市場となる」と述べ、フィリピンのホテル市場の拡大基調が数年にわたって継続するとの見解を示した。
フィリピンは昨年の経済成長率が7.2%で、インドネシア、タイ、マレーシア、ベトナムを含む東南アジア諸国連合(ASEAN)の主要5カ国で最高となるなど、経済が好調だ。楽観的な景気の見通しを受け、国内外各社のホテル市場への投資も続いている。
同国マニラ首都圏で2009年にカジノ付きホテル「リゾート・ワールド・マニラ」をオープンさせたマレーシアの娯楽施設運営大手ゲンティン・グループは8月、6億5000万ドルを投じて同ホテルのカジノ部門と宿泊施設を現在の倍の規模に拡張すると発表した。
また、同ホテルの出資者でもあるアンドリュー・タン氏が率いる地場財閥系の不動産開発会社アライアンス・グローバル・グループも8月、20年までに米国のヒルトンやマリオット、日本のオークラなど国内外12ブランドのホテルを新たに開業させると発表した。
同グループが手がける客室数を現在の1900室から1万2000室に増加させ、ホテル運営で一気に国内最大手の座を狙うとする野心的な計画だ。
フィリピンの昨年の外国人旅行者数は前年比5.5%増の470万人。今年1~6月期は前年同期比2.2%増の243万人とやや伸び悩んでいるが、観光を主要産業にしたい同国政府は、関連インフラ整備などを進めて産業育成を支援するとしている。
整備が順調に進めば同国を訪れる旅行者の増加ペースが加速し、ホテル需要が一段と高まる可能性もある。建設やカジノ運営をめぐる動きなど、ホテルにかかわる各方面での競争も激しくなりそうだ。