低迷続くマカオカジノ業界 コロナと反腐敗が多角化後押し

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中国の特別行政区マカオ(Macau)では、新型コロナウイルス流行に伴う規制によって中国本土からの観光客が遠のき、3年近く低迷が続いている。主な収入源である賭博産業をはじめ、経済全体が大打撃を受けたままだ。

かつてポルトガルの植民地だったマカオは1999年に中国に返還されて以降、中国国内で唯一、賭博が合法とされる場所となった。その20年後には米ラスベガス(Las Vegas)の年間賭博収益の約6倍を生み出すまでに成長した。

■「ジャンケット王」の逮捕

だが新型コロナが流行する前から、賭博事業は習近平(Xi Jinping)国家主席が推進する反腐敗運動の規制対象になっていた。

昨年11月、カジノの上客の世話をする「ジャンケット」と呼ばれる仲介業最大手「太陽城集団(サンシティーグループ、Suncity Group)」のトップで「ジャンケット王」の異名を取る周?華(アルビン・チャウ、Alvin Chau)被告が逮捕された。周被告は、詐欺、マネーロンダリング(資金洗浄)、犯罪シンジケート運営などの罪で起訴された。

この一件は、中国から現金を吸い上げるルートとしてマカオを利用する当局者や富豪に対する中国政府の強硬姿勢を鮮明に示す出来事だった。

マカオを拠点とする賭博アナリストのベン・リー(Ben Lee)氏は「これまでの訪問客の90%、収益の90%は中国からもたらされています。(中略)基本的にわれわれは中国本土の賭博師を引き付ける中心地なのです」と指摘する。

「そのためマカオ政府は明らかにこの業界を中国から遠ざけ、方向転換するよう圧力をかけられているのです」

■業界の変革

マカオ政府は長い間、賭博事業から観光やレジャーへの多角化を望んできた。

人口68万人の5人に1人が賭博業界で働くマカオにとって、繰り返し実施されたロックダウン(都市封鎖)、コロナ検査、国境閉鎖などは中国への返還以降経験した最も厳しい時期となった。

中でも今年7月、オミクロン株の感染拡大と闘うためにカジノを含めた街の大部分がロックダウンされたことは、最大の試練だった。

マカオ立法会(議会)元議員の蘇嘉豪(Sulu Sou)氏は「マカオのような比較的自由で開かれた都市にとって極限状況でした」と述べ、経済は「崩壊寸前の状態で」ロックダウンから抜け出したと続けた。

マカオ大学(University of Macau)の統合型リゾート・観光学管理学科准教授のグレン・マッカートニー(Glenn McCartney)氏は「過去2~3年の間に、まさにコロナによって多様化の必要性にスポットライトが当てられたのです」と指摘する。