かつてマカオのカジノ売上の大半がVIPルームによるものだったが、近年ではマス(平場)シフトが進み、割合は均衡あるいはマス優勢の状況となっている。
新型コロナウイルス感染症の影響が生じた2020年2月以降もVIPルームの占める割合は縮小が続き、昨年(2021年)末には大手仲介業者(ジャンケットプロモーター)「サンシティ」トップの逮捕を発端としたジャンケット系VIPルームの大量閉鎖もあった。
このほどマカオのゲーミング(カジノ等ギャンブル)規制当局(博彩監察協調局=DICJ)が公表した今年第3四半期(2022年7〜9月)のゲーミング統計によれば、VIPルームによるカジノ売上を反映するVIPバカラ売上は前年同期比80.6%減の11.55億パタカ(日本円換算:約213億円)で、全体に占める割合は11.0ポイント下落の20.8%にとどまった。
昨年以降のVIPカジノ売上と全体に占める割合の推移をみると、昨年第1四半期が91.28億パタカ(約1682億円)で38.6%、第2四半期が85.03億パタカ(約1566億円)で33.5%、第3四半期が59.59億パタカ(約1098億円)で31.8%、第4四半期が48.99億パタカ(約902億円)で25.7%、今年第1四半期が48.39億パタカ(約891億円)で27.2%、第2四半期が19.88億パタカ(約366億円)で23.4%と下落傾向が顕著だ。
昨年12月末までに多くのカジノ運営企業がVIPルームを運営する仲介業者との協力関係を打ち切っており、カジノ売上に占めるVIPルームの割合は今後も低迷が続くものと予想される。
なお、ジャンケット系VIPルームの大量閉鎖があったのが12月のことで、顧客の一部はカジノ運営企業直営のVIPルームやプレミアムマス等へ移行したものとみられる。ジャンケット系VIPルームの多くが市場から姿を消して3四半期目となる今年第3四半期のカジノ売上は55.50億パタカ(約1022億円)で、前年同期比70.4%減、今年第2四半期比34.7%減。マイナスの主要因として、中国本土の各地で新型コロナの再流行が出現したことに伴う水際措置の引き締めによる旅客減が挙げられる。また第2四半期の6月中旬〜8月初旬にはマカオでオミクロンBA.5の市中感染「6・18アウトブレイク」が発生し、インバウンド市場は壊滅的な打撃を受けた。マカオのアウトブレイク終息後も中国本土各地で再流行が散発的に出現する状況が続いており、インバウンド旅客の本格的な回復には至っておらず、第4四半期のカジノ売上についても急回復は見通せない。
このほか、今年第3四半期時点のカジノ施設数は前年同時期から4軒減の37軒で、稼働中のゲーミング(カジノ)テーブルの数は前年同時期から328台減、今年第2四半期から32台減の5974台、スロットマシンの数は前年同時期から938台増、今年第2四半期から345台増の1万2837台だった。今年第2四半期内には複数の衛星(サテライト)カジノ施設が営業を終了するという特殊要因もあった。