横浜でIR誘致断念!その背景にあるものとは
横浜では、選挙結果によってIR誘致の断念、つまりカジノ構想が消えました。
背景に何があったのか、紹介していきます。
横浜市長選挙でIR誘致反対派の勝利でカジノ構想消滅
“8月の市長選で初当選した横浜市の山中竹春市長(48)は10日、カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致撤回を正式に表明した。”
横浜市長選挙の結果、立憲民主党が推薦した山中氏が初当選を果たしました。自民党は保守分裂戦略となり、菅総理が実質的に推薦した小此木氏が18万票の大差を新人候補につけられてしまったかっこうです。
選挙の争点となったのは、IR誘致の是非です。林文子前市長は元々IR誘致に慎重な立場でしたが、2019年8月に山下ふ頭への誘致を発表したことで、市民の反発がありました。
IRとはカジノを含めた、ホテルや劇場、ショッピングモールなどの統合型リゾートのことです。カジノがあることで、ギャンブル依存症や治安悪化といった懸念があります。山中氏は、選挙公約の中にIR誘致撤回を第一に掲げており、当選後の9月には市議会の本会議に出席した時に所信表明演説で、正式にIR誘致を撤回することを表明しました。また、小此木氏もIR誘致反対の立場で選挙に望みましたが、公約の実効性から鑑みた場合、山中氏に軍配が上がっただけのことでしょう。
IR誘致よりも新型コロナ対策が求められた!?
実は選挙の争点がもう1つありました。
それは、新型コロナ対策です。
選挙が行われた8月は神奈川県内で新型コロナの新規感染者数は2000人を超え、過去最高を更新し続けている状況でした。しかも横浜市だけで、新規感染者が1000人を超えるほど、感染状況は深刻だったのです。
山中氏は、IR誘致の是非より先にやるべきことがあると選挙活動の過程で市民に語りかけました。元横浜市立大学医学部教授という肩書きを利用して「新型コロナの専門家」というイメージを市民に植え付けることで、IRよりも新型コロナ対策を万全に行うことを公言し、それが選挙の争点をズラすことにつながりました。つまりIR誘致が「お金」なら、新型コロナ対策は「命」なのです。
横浜市民は「お金」よりも「命」を選択したことになります。こうして、横浜ではカジノ構想が消えたわけです。IR推進事業にお金をかけるよりは、新型コロナで打撃を受けた飲食店や働き口を失った失業者などを救済する方が横浜市民にとって「利益」となる決断と言えましょう。