菅首相誕生「IR」前進に期待感も経済状況に懸念
カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の推進に積極的な菅義偉氏の首相就任は、IR構想実現にプラスになるとの観測が浮上しており、大阪や和歌山の知事は「前に進む」などと期待を寄せた。ただ大阪の場合、新型コロナウイルスの影響で参入を目指す米企業の経営状況は悪化。集客型のIRのビジネスモデルにも疑問符が付くなか、IRが実現しても、期待された経済効果が得られない事態も懸念される。
「菅首相は安倍晋三前首相より推進派だと思っている。確実に進めていくだろう」。大阪府の吉村洋文知事は16日の記者会見で、菅首相の誕生によりIR計画が前進するとの見通しを表明。「IRは大阪の成長に必要であり、実行して進める。経済規模などの条件を見ても非常に有力(な候補地)だ」と述べた。
一方、和歌山市の人工島「和歌山マリーナシティ」への誘致を目指す和歌山県。仁坂吉伸知事も16日、「旗振り役だった菅さんが首相になり、(IR監督官庁の)国交相も留任した。県の思いは言わなくても分かるはず」と強調した。
関係者の期待は高まるが、新型コロナの直撃を受けたIR産業の現状は厳しい。
オリックスと共同で大阪参入を目指す米MGMリゾーツ・インターナショナルはラスベガスなど主要施設の閉鎖を余儀なくされ、2020年4~6月期の売上高が前年同期比で9割超減少。8月末には、全従業員の約4分の1にあたる1万8千人を解雇すると報じられた。MGMは大阪IR参入にも引き続き強い意欲を示すが、「投資には適切なリターンが必要だ」(ホーンバックル最高経営責任者)とも述べている。
大阪湾の人工島・夢(ゆめ)洲(しま)(大阪市此花区)に誘致を目指す大阪府市は昨年、事業者によるIRの投資規模を9300億円とする基本構想案を提示したが、IR情報サイトを運営するキャピタル&イノベーションの小池隆由社長は「新型コロナでIR産業の収益力が減退するなか、投資規模は縮小せざるを得ない。MGMの株主も巨額投資を容認しないだろう」と指摘する。
一方、小池氏は「IRの収益エンジンであるカジノの施設面積は、IR全体の数%しかない。投資規模が縮小しても、事業者側は採算が取れる」とも。ただその場合、MICE施設と呼ばれる国際会議場・展示場やホテル、劇場など、カジノ以外の施設規模に影響を及ぼすことは必至だ。(産経新聞)