カジノや高級ホテル、エンターテインメント機能を備えた統合型リゾート施設(IR)を国内に整備する法律が昨夏、自民、公明党などの賛成多数で成立した。国民民主は反対の立場だったが、法案成立は防げないとして、ギャンブル依存対策などを強化する参院内閣委員会の付帯決議に賛同。ただ、カジノ開業には不安が根強く、政府は整備に向けた基本方針の公表を参院選後に先送りにしており、選挙戦でも論戦は深まらない。
県と佐世保市はハウステンボス(HTB)にIRを誘致して国内外の観光客の交流点にしたい考え。6月、九州地方知事会は九州に設置を認めるよう国に働き掛ける特別決議を採択した。
行政や経済界は前のめりだ。シンガポールのIR「マリーナベイ・サンズ」運営会社元社長のウィリアム・ワイドナー氏らが率いる東京のIR企画会社は長崎のIRに4千億円の投資を表明。6月に佐世保市であったセミナーでは、別業者が5500億円の投資を明らかにした。県は九州全域への経済波及効果を約2600億円、雇用創出は約2万2千人と見込む。国が認める立地区域は最大3カ所とされ、大阪府・市が有力視される。県は国の認可を前提としてHTBに30ヘクタールの用地を確保した。
一方で、ギャンブル依存症患者の増加や青少年への悪影響を理由にIR誘致に反対の声もある。西日本新聞社が県内有権者840人に行った電話世論調査でも、反対派が49・0%と約半数を占めた。IRを推進する自民の支持層でも賛否は割れ、国民の支持層では8割近くが「反対」「どちらかといえば反対」だった。
それでも、選挙戦で「IR」は聞こえてこない。市民団体「ストップ・カジノ!長崎県民ネットワーク」の新木幸次事務局長(67)は「参院選で是非を問うべきなのに、候補者も多くを語っていない」と残念がる。
西日本新聞の候補者アンケートで自民現職の古賀友一郎氏(51)は「九州全域の魅力を武器に大都市型との差別化を」と回答。国民新人の白川鮎美氏(39)はカジノ整備を前提に「経営面でもHTBへの立地は問題はない」と答え、政治団体「NHKから国民を守る党」新人の神谷幸太郎氏(43)は「経済面では良い」と応じた。
西日本新聞