マカオの次期カジノ経営コンセッション(ライセンス)を獲得した6事業者は12月16日に政府と契約締結を行った。いずれも現行の事業者で、ライセンス期間は2023年1月1日から10年間。
カジノ産業はマカオ経済の大黒柱となっており、マカオ社会におけるプレゼンスは20年前の現行ライセンス入札時とは比較にならないほど巨大化した。次期カジノ経営コンセッションの入札にあたり、政府はマカオを取り巻く社会・経済上の課題解決に向けたカジノ関連法の改正を行い、入札要件にも盛り込んだ。
中でも、重点評価対象とされたのが、ノンゲーミング(非カジノ要素)の拡充と国際旅客の誘致促進だ。
現行ライセンス下では、統合型リゾート(IR)を主としたアジアのラスベガスを目指して開発が進んだものの、売上の大半はカジノから、またインバウンド旅客全体の8割強を中国本土旅客が占め、カジノ及び中国本土旅客への過度な依存が課題とされてきた。
カジノ売上は世界一になったが、ラスベガスと比較してレジャー・エンターテインメントやMICE分野が弱いのは一目瞭然。端的にいえば、カジノ目当ての中国人(特にハイローラーと呼ばれる大口客)だけを相手した商売からの脱却が求められている。その中国でも余暇の多様化が進んでおり、ノンゲーミングの拡充は国際旅客の誘致のみならず、中国からのカジノ以外を目的とした新たな旅客ソースの開拓にも有利となるだろう。
近年、マカオ政府はマカオを世界的レジャー・ツーリズム・センターへと変貌させ、経済の適度なダイバーシティ化(カジノ依存からの脱却)促進を目標として掲げており、以降は新規IR施設オープン時のカジノテーブル数割り当てにあたってノンゲーミングへの投資を評価基準とするなどの策を打ち出し、現行ライセンス6事業者がノンゲーミングの拡充に舵を切るきっかけとなった。マカオのカジノ売上に占めるVIPルームとマス(平場)の割合も均衡化が進んでいる。
次期カジノライセンスの入札において、6事業者は契約期間内に計1188億パタカ(日本円換算:約2兆0193億円)の新規投資についてもコミットしたことも明らかとなっている。内訳は海外旅客ソースの開拓とノンゲーミング(非カジノ)分野への充当分が1087億パタカ(約1兆8476億円)に対し、ゲーミング(カジノ)分野は101パタカ(約1717億円)にとどまった。
マカオ政府と6事業者は17日に合同会見を開き、6事業者がそれぞれ政府とコミットした向こう10年間の投資額及び投資計画案についての発表を行った。具体的には下記の通り(政府発表による入札書の評価点順)。
1. MGM Grand Paradise Limited
・総投資額:167億パタカ(約2839億円)
・うちノンゲーミング分:150億パタカ(約2550億円)
2. Galaxy Casino Company Limited
・総投資額:284億パタカ(約4827億円)
・うちノンゲーミング分:275億パタカ(約4674億円)
3. Venetian Macau Limited(サンズグループ)
・総投資額:300億パタカ(約5099億円)
・うちノンゲーミング分:278億パタカ(約4725億円)
4. Melco Resorts (Macau) Limited
・総投資額:118.28億パタカ(約2010億円)
・うちノンゲーミング分:100.08億パタカ(約1701億円)
5. Wynn Resorts (Macau) Limited
・総投資額:177.3億パタカ(約3014億円)
・うちノンゲーミング分:165億パタカ(約2805億円)
6. SJM Resorts, Limited
・総投資額:140.33億パタカ(約2385億円)
・うちノンゲーミング分:120億パタカ(約2040億円)
ノンゲーミング関連投資計画案について、各社ともレジャー・エンターテインメント関連施設及びコンテンツの拡充、国際スポーツイベントの誘致、MICE施設の拡充などを盛り込んだ。新たなエキジビション施設、レジデントショー、ハイテクテーマパーク、ミュージアム、熱帯植物園、ウォーターパークなどが近く登場する見通しだ。
国際誘致については、主にアジアをターゲットしたプロモーションを計画しており、複数の事業者(Galaxy、Venetian、Melco、Wynn)が重点市場のひとつとして具体的に日本の名を挙げた。今後、日本におけるマカオの露出が増えることも予想される。参考までに、コロナ前におけるマカオのインバウンド旅客数の国・地域別順で日本は中国本土、香港、台湾、韓国に次ぐ5番手で、年間およそ約30万人だった。