政府は今秋にも、カジノを含む統合型リゾート(IR)事業者の適格性を判断する「カジノ管理委員会」を設ける。設置区域の認定基準などを定める基本方針案も秋以降に公表し、地方自治体と事業者による申請に向けた準備を進める。全国で最大3カ所の認定地域は2020年にも決まる見込みで、自治体による誘致準備が本格化する。
カジノ管理委はIR実施法の規定により、20年1月26日までに設置する必要がある。政府内では当初、先の通常国会に人事案を提出し、今年7月に立ち上げる案もあった。参院選への影響を考慮し見送った経緯がある。
カジノ管理委は事業の健全な運営を保つための監督機関だ。事業者の財務体質を調査するほか、ギャンブル依存症やマネーロンダリング(資金洗浄)の対策を担う。ゲームの種類を定め、事業のルールが守られているかを確認する役割もある。
IR整備の意義や目標、事業者の選定基準などを定める基本方針案も秋以降に公表し、一般から意見を募る。認定の公正性を確保するための基準や、カジノ施設の有害な影響を排除する規則を盛り込む。実施法の規定で、20年7月までに策定する。
自治体は基本方針を踏まえて事業者の公募と選定に取りかかる。その後、事業者と共に整備計画を作り、国に申請する。申請期間は20年に政令で定める。国は20年にも全国で最大3カ所を認定し、施設の整備が始まる。開業は20年代半ばと見込まれている。
誘致を目指す自治体からは早期のカジノ管理委の設置と基本方針案の公表を求める声が上がっている。最大で3枠の獲得競争に向け、一部では国の制度設計に先立ち、誘致の準備を進める自治体も出ている。
25年の国際博覧会(万博)開催が決まった大阪府・市は万博前までの開業を目指して誘致する。IRと万博の相乗効果を期待するためだ。少しでも準備を進めようと、4月から事業者に「コンセプト案」の提出を求め、国内外の7事業者が参加登録した。
千葉市には5月、市内の企業10社からIRを導入する事業提案があった。10月からはIRに参入する考えのある企業を対象に、構想案や経済効果の情報募集を始める。19年度中に調査結果を公表し、誘致するかどうかの判断材料とする。
18年秋に国が都道府県と政令市を対象に実施した準備状況調査によると、整備計画を「申請予定」と回答したのは大阪府・市、和歌山県、長崎県の3カ所だった。東京都、北海道、横浜市、千葉市の4カ所は「検討中」と答えた。
国による制度設計が遅れる一方、自治体による誘致準備は徐々に熱を帯びている。カジノ管理委の設置と基本方針案の公表後、自治体の誘致活動が一気に加速するとみられる。
日本経済新聞