11月9日、「カジノ法案」IR推進法がついに国会審議入りする。
それに先立ち10月12日、国会内において国際観光産業振興議員連盟(以下、IR議連)総会が開催された。IRとは、国際会議場・展示施設やMICE施設、ホテルやショッピングモール、レストランや劇場・映画館ほか、様々な施設にカジノを含んで一体となった複合型リゾートのことをいう。
IR議連は、IRの日本設置に向けた国会議員の集まりであり、今回開かれた総会には、国会議員や、IR誘致に取り組む地方自治体、経済団体などの関係者ら約300名が集まった。
まず注目すべきは、その参加者の数である。過去にもIR議連の活動はあり、日本へのカジノ設置は国会議員レベルでは度々議論されてきたが、これほどの数が集まったことはない。
この参加者の数は、議連側の本気度をうかがえる規模であり、これまで重要法案の可決や解散総選挙などの煽りを受け、遅々として進まなかったカジノ設置に向けた動きに拍車を掛ける大きな転機となり得るともいえる。
そもそも、なぜ日本はカジノを設置しなくてはならないのか。
安倍首相が提唱する「観光立国」。目標は2020年までに訪日外国人数を4000万人までに増やすこと。さらに2030年までには6000万人を標榜しており、IRという観光資源はその目標達成に向け必須要件である。
自民党の細川博之総務会長は「IRは国策」と言い切り、長期的な日本経済発展のためにはIRは絶対に必要であると述べている。
しかし、カジノの設置に対してはもちろんのこと反発も大きい。
何よりもギャンブル依存症などによる生活破綻者の問題がもっとも憂慮されており、これに関しては韓国・江原道に設置されている「江原ランドのカジノ」(韓国人が唯一入場を許されているカジノ)で自殺者や破産をする人が続出した事実がそれを物語っている。カジノはまさに「諸刃の剣」なのである。
さて今回のIR議連総会である。
冒頭、議連の会長でもある細田博之氏(自民)が、今臨時国会でIR推進法案を成立させたいという思いを語った。今臨時国会の会期は12月の上旬。それまでに与野党内の慎重派、反対派を説得して回る姿勢を示した。続いて岩屋毅・IR議連幹事長(自民)が自民、公明の与党内でハイレベルの調整を行っている旨を明かした。
IR議連は超党派の議連であり、なかには公明党や民主党の議員もいる。IR設置に前向きな公明、民主の議員たちは自党内の慎重派、反対派を説得する構えを見せ、まさに議連総力戦の様相を呈している。
12月上旬に国会での成立を狙う。そんなことが果たして出来るのか。例えば10月13日の産経新聞の記事ではこのように書かれている。
「自民党の二階俊博、日本維新の会の馬場伸幸両幹事長は13日午前、国会内で会談し、安倍晋三政権が最重要課題と位置づける環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)承認案と関連法案について、14日から衆院特別委員会で審議に入ることで一致した。
二階氏が会談で14日の審議入りに向け『協力してほしい』と要請。馬場氏はTPP推進の立場から協力すると応じ、『慎重で丁寧な委員会運営をしてもらいたい』と注文を付けた。(筆者中略)馬場氏は会談で、カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)整備推進法案の今国会成立を念頭に協力を呼びかけ、二階氏は『よく分かっている』と応じた」
また10月19日、ロイター通信のインタビューに応じた公明党・井上義久幹事長は「カジノを含む統合型リゾート(IR)の整備を促すカジノ解禁法案については、提出されている議員立法は原則、審議するというのが基本」と審議入りについては了解の意を示し、「賭博行為を例外的に認めることになる。
それだけの社会的な意義、国民的なコンセンサスがあるかどうか、観光面での経済効果がどの程度あるのかも含め、議論が必要」とIR推進法に関しても理解を示している。
マスコミ報道では、TPP法案に関わるニュースが連日報道されているが、その裏で、日本初のカジノ設置に向けた動きもハイスピードな動きを見せている。11月上旬の審議入りはほぼ間違いなく、情勢次第では今臨時国会でIR推進法案が可決されるかも知れない。
日本社会に大きな一石を投じるカジノ問題。今後もその動きを注視する必要があるだろう。