政府は17日、カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)の整備を検討する新組織を作る方針を固めた。議員立法のIR推進法案(通称・カジノ法案)が秋の臨時国会で成立する可能性があることを踏まえ、関連施策の準備に入る。政府としてカジノ整備の検討に着手するのは初めて。
2020年の東京五輪前に施設を整備し、海外客も集めて経済活性化につなげたい考えだ。ただ、カジノはギャンブル依存症や青少年育成への悪影響が懸念されており、負の側面のしっかりした検証も欠かせない。
政府関係者によると、新組織は、重要政策の企画立案や総合調整を行う「内閣官房」に設置。国土交通省や財務省、経済産業省、法務省、警察庁などから数十人を集める見通しで、月内にも人事異動を発令する。
カジノは安倍晋三首相の肝いり。首相は5月、シンガポールのIRを視察し、6月に策定した成長戦略に、カジノを含むIRを検討する方針を明記した。
自民党、日本維新の会、生活の党が国会に提出し、継続審議になったIR推進法案は、刑法(賭博罪)が禁じているカジノを指定地域に限って合法化し、国の管理下で民間事業者によるカジノ運営を認める。政府に対し、法施行後1年以内をめどにカジノの運営ルールや規制のあり方などを盛り込んだ関連法の整備を義務付けている。
推進法案が成立した場合、政府は首相を本部長とする推進本部と、有識者らで構成する推進会議を設置。内閣府には、カジノ運営を監視する「管理委員会」を設ける。内閣官房の新組織がこれらの会議体作りの準備や運営の支援にあたる。
カジノを巡っては、「観光振興の切り札」と位置づける地域の間で誘致合戦が過熱しており、これまでに東京都や大阪府・市、沖縄県など全国20地域以上が誘致に関心を示している。
ただ、マネーロンダリング(資金洗浄)やギャンブル依存症の増加などの悪影響を懸念する声も根強く、日本弁護士連合会は5月、推進法案の廃案を求める意見書を首相と衆参両院議長に提出した。カジノ推進に意欲的な安倍政権が、どこまで負の側面を踏まえた検討を進められるかも問われそうだ。
(毎日新聞 三沢氏)